「みんなの意見を聞かせてください!」
「意見があれば遠慮なくどんどん言ってね!」
「なにも言わないのが一番ダメ! 言いたいことは言うべきだ」
などなど、表向きには部下に意見を求めるアピールをする。
しかし、実際に意見を言っても、まったく人の話を聞こうとしない。。。
そんな上司の頭の中はどうなっているのか知りたくないですか?
話を聞かない上司の特徴は5つあります。
- 自分の意見や判断に意識が向いている
- 部下が言いたいことをわかったつもりになる
- 自分の経験に当てはめて考える(愚者)
- 「どうせこうやろ!」と勝手な解釈をする
- 部下の意見を「引き出す」より、自分の考えを「押し付ける」ことを考えている
この特徴を踏まえたうえで、
今回は、意見を求めるくせに人の話を聞かない上司の頭の中について、書いていきたいと思います。
部下の意見をはじめから聞くつもりはない?
「人の話を聞く気ないなら、最初から意見を求めてくるな!」
このような上司に対する愚痴をよく耳にします。
そんな上司でも、実は、部下の意見を聞こうとはしています。
なぜなら、「部下を動かすため」には、「部下の話を聞く」という行為が大切だということは一応わかっているからです。
ただ、何のために話を聞かなければいけないのか、部下の話を聞く「本来の目的」は何なのかは理解できていません。
本来の目的は、
「信頼関係」を築き、部下の「主体性」を引き出すこと。
そのためには、部下の意見に耳を傾け、部下の価値観(大切にしていること)を理解することが大事です。
しかし、「部下の話を聞く」というのは、上司にとって「表の目標(タテマエ)」。
「裏の目標(本音)」はこうです。
「自分の思うように部下を動かしたい」
「上司としての権威性を維持したい」
このように、意見を求めるくせに人の話を聞かない上司は、「タテマエ」と「本音」が一致していないので、言っていることとやっていることが矛盾してしまうんですね。
一応、部下の意見を聞こうとはしています。
ただし、部下の意見を聞くことで、上司としての権威性が薄れてしまうことを恐れている。
これが「本音」です。
言動の矛盾を上司に伝えるにはどうすればいい?
言動が矛盾していることを上司に伝えるためには、
主観を一切入れない「ファクトベース」で伝える方法が有効です。
「ファクトベース」とは、事実・データを正確に読み取り、それに基づいて意見を述べること。
この「ファクトベースで話す」というのは、「客観的にありのままの状態を伝える」ということと、「(まだ)感情や自身の思いを乗せない」の2つに集約されます。
『リーダーのためのフィードバックスキル』(服部 周作/すばる舎)より引用
つまり、
「誰が見ても、そう映る」と感じられる「客観性のあるメッセージ」として伝えることです。
たとえば、
<例1>
「あなたはいつも遅刻する」
↓
「あなたは週4回、8時30分のミーティングに10分ほど遅れて参加しています」
<例2>
「あなたは他人の話を聞いているようで聞いていない」
↓
「あなたは私が話している途中に3回、話を止めてアドバイスをしてきました。私がお伝えしたいことの5割も伝わっていない状態です」
というような感じ。
客観的な事実として、話を聞いてもらえてないことを伝えたうえで、
「私の意見を100%聞いていただいたうえでアドバイスお願いします」
と言えばOKです。
「権威性」を大切にしている上司には要注意!
タテマエは、「部下の意見を聞いて現状を変えたい」と思っていても、本音では、上司としての「権威性」を大切にしている上司には注意が必要。
自分のほうが立場が上だという「優越感」があるからこそ、自尊心が保たれて冷静さをキープできている可能性が高いからです。
そういう上司は、他人からのフィードバックを素直に受け入れることができません。
なぜなら、他人より優れていたいという「優越欲求」が邪魔をしているからです。
優越欲求とは、「人よりも優れていたい」「人から認めてもらいたい」という承認欲求のひとつ。
権威や権力をもったり、上のポジションにつくなどすると、この優越欲求はどんどん強くなります。
自分に意見してくる人が減り、逆に自分の言うことを聞く人が増えるので、「自分は優れている」という勘違いも生まれます。
こういう人は、いくら客観的な事実を伝えたとしても聞く耳をもちません。
それどころか、「自分のプライドを傷つけられた」と思い、敵対心むき出しで攻撃してくる可能性もあります。
そうなれば仕事がやりにくくなるだけでなく、職場の雰囲気も悪くなり、まわりの人にも迷惑がかかってしまうことになるかもしれません。
それは避けたいですよね。
そのためにも、上司の言動を注意深く観察し、「本音」と「タテマエ」を見極めてください。
まとめ
今回は、意見を求めるくせに人の話を聞かない上司の頭の中について書きました。
簡単にまとめると、
- 部下の意見を聞こうとはしているが、本来の目的を理解していない
- 「タテマエ」と「本音」がズレているので、言動が矛盾している
- 部下の意見を聞くことで、上司としての権威性が薄れてしまうことを恐れている
- 言動の矛盾を伝えるためには、主観を一切入れない「ファクトベース」で伝える方法が有効
- 「権威性」を大切にしている上司は、他人からのフィードバックが受け入れられない
会社で起こる人間関係の問題はすべて、「相手に対する理解不足」が原因です。
相手の話を聞かずして、相手を理解することはできません。
理解できなければ、部下との信頼関係を築くことはできないでしょう。
相手の話を聞けない自分本位な人間は、相手から信用されません。
聞くことができなければ、コミュニケーション自体が成立しないのです。
信頼関係のベースとなるのは、相手の話をよく聞き、深く理解することなのです。
『「聞く力」こそがリーダーの武器である』(國武大紀/フォレスト出版株式会社)より引用