- 意見を聞いたり、褒めたり、アドバイスしたりしているのに、部下に避けらる
- なんでも話してくれと言っているのに、本音を語ってくれない
- 前は何でもやりたがっていた部下が、今ではやる気がなくなっている
こんな悩みはありませんか?
この原因は、あなたが部下に対して「無意識に罰を与えているから」かもしれません。
「罰」といっても、パワハラになるようなものではなく、ほんの小さな一言や態度だったりします。
これは本人に自覚がない場合がほとんどなので、直そうにも直せません。
しかし、心理的安全性と心理的「非」安全という概念を理解できれば、どこをどう直せばいいのかが明確になるはずです。
そこで今回は、「心理的安全性」について、詳しく書いていきたいと思います。
※この記事は、 『心理的安全性のつくりかた』(石井遼介/日本能率協会マネジメントセンター)の内容を参考にして書いています。
心理的安全性とは何のこと?
「心理的安全性」とは、組織やチーム全体の成果に向けた、率直な意見、素朴な質問、そして違和感の指摘が、いつでも、誰もが気兼ねなく言える状態のこと。
『心理的安全性のつくりかた』より引用
「みんなで仲良くやること」や「チームメンバーが傷つくことがないことが保証されている状態」とは違い、「何かを提案したり、質問したり、何かにチャレンジして失敗しても、罰せられたり恥をかかされたりすることがない」と信じられる「安心で安全な環境」のことです。
世界トップ企業のひとつグーグルが、大きな成果をあげるチームの条件として「心理的安全性」を重要視していることは有名な話です。
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Google re:Work - ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る
Google のリサーチチームは、「心理的安全性を高めると、チームのパフォーマンスと創造性が向上する」ということを発見し ...
rework.withgoogle.com
その理由は、
- チーム学習が促進され成長スピードが速い
- パフォーマンスと創造性が向上する
- 多様なアイデアを効果的に活用することができる
- 収益性が高い
- 離職率が低い
というメリットがあるからです。
「それは優秀な人材が揃っているグーグルだからできることでしょ?」
「造ってナンボの製造現場にはそんな余裕はない!」
と思うかもしれませんが、余裕がないのならなおさら力を入れるべきテーマです。
なぜなら部下の成長を促進することで、
「思考力が向上」→「自主的に行動できるようになる」→「生産性が上がる」
という良い循環ができ、結果的に余裕を生み出せるからです。
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「心理的安全性が大事なのはわかったけど、具体的にどうすればいいの?」
となる前に、まずは心理的「非」安全な状態を知ることが先決です。
そうすることで、無意識にしている自分の行動を振り返り、改善することができるからです。
心理的「非」安全な状態とは
心理的「非」安全な状態とは、良かれと思って行動しても「罰を受けるかもしれない」というリスクがある状態のことです。
「罰」といっても、怒鳴り散らすとか、嫌がらせをするとか、評価を下げるといった大げさなものではありません。
ひとつ一つは小さなことですが、この小さなことがボディーブローのようにじわじわ効いてきます。
たとえば上司に、新しい試みを提案したとします。
「それ、ほんとにうまくいくの?」
と怪しまれたり、もし結果として失敗してしまったら、評価が下がったり……。
これって、「あなたのことを信用していないよ」と言われてるのと同じことです。
少しでもプラスになれば……というチームへの貢献を意図して動いていた部下にとって、ショックが大きいことがわかると思います。
そのほかにも、
- こんなこと質問したら「無知」だと思われるんじゃないか…
- 挑戦して失敗したら「無能」だと思われるんじゃないか…
- 助けを求めたら「邪魔」だと思われるんじゃないか…
- 率直な意見を言うと「否定的」だと思われるんじゃないか…
という「対人関係のリスク」があります。
小学校の授業を思い出してみてください。
先生の言葉の意味がよくわからなかったので、質問して、もう少しわかりやすく説明してほしいと思ったとします。
でも、、、
「こんなこと質問したらバカにされそう」とか、
「そんなことぐらいで授業を止めるなよ!」と思われるんじゃないか……
という恐怖で質問できなかった経験はありませんか?
それと同じです。
このようなリスクが少しでもある場合、気持ちが弱い人は「率直な意見」や「素朴な質問」が言えなくなる。
リーダーには「部下を成長させる」という大事な役割があります。
「対人関係リスク」を放置することは、伸びる可能性のある部下の前向きな気持ちを摘んでいるのと同じ。
成長意欲を奪っていることと同じです。
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部下の「挑戦意欲を奪う上司」を支配している「思考の癖」とは
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著書『心理的安全性のつくりかた』には、心理的「非」安全な職場の問題について、次のように書いてあります。
心理的「非」安全な職場は「チーム学習」という観点で、大きく次の2つの問題があります。
- 挑戦することがリスクとなるため、実践し、行動することから学ぶということができなくなる
- 個々のメンバーが気づいていたり知っていたりすることを、うまくチームの財産へと変えることができない
つまり、チームというより分断された個人の集団(グループ)となってしまい、個人の学びはチーム・組織の学びとならないのです。
『心理的安全性のつくりかた』 第1章「チームの心理的安全性」より引用
心理的「非」安全な職場では、「行動すると罰せられるのだったら行動しないほうがマシ」という思考になり、必要なことでも行動しなくなってしまう。
その結果、行動しない部下に対して指示や命令が多くなり、関係性が悪化していくという負のスパイラルに陥ってしまうということです。
まとめ
今回は、心理的安全性と、心理的「非」安全について書きました。
簡単にまとめると、
- 心理的安全性が高いチームは、部下の成長を促進し、結果的にチームのパフォーマンスが上がる
- 心理的「非」安全なチームは、罰を受けないように必要なことでも行動しなくなりパフォーマンスが下がる
成功循環モデルの、グッドサイクルとバッドサイクルの違いそのまんまですね。
※組織の成功循環モデルについては、こちらの記事に詳しく書いています。
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