手順書を丁寧に作っている現場ほど、こんな壁にぶつかります。
「写真も載せた。文章で手順も書いた。なのに、見た通りに動いてくれない」
問題は手順書の出来ではありません。
写真と文章では伝えにくいものまで、紙だけで伝えようとしている。だからこの問題が起きている。それだけのことです。
作業には、写真で分かるものと、流れの中で見ないと分からないものがあります。
手の角度、動かすスピード、どこで力を入れてどこで抜くか。
こういうものを全部言葉にしようとすると、手順書は長くなり、読む側も止まってしまいます。
だから、OJTで動画が役に立つんです。
ただし、何でも動画にすればいいわけではありません。大事なのは、その作業を一番伝わりやすい形で残すことです。
目的は動画を作ることではなく、相手に理解してもらうことです。
作業手順書は「あるだけ」では足りない
現場の手順書には、形は整っているけれど、実際にその通りにやれるかは別の話、というものが少なくありません。
写真を貼り、手順の文章を並べる。
形としては手順書になっている。でも、作業をやってみると、想定と違う動きになる。
写真で伝わるものは確かにあります。
完成形、部品の向き、配置の確認。こういうものは写真が向いています。
一方で、作業の流れや細かい動きの感覚は、写真では伝わりにくい。
たとえば、手をどの角度で入れるか。どのくらいの速さで動かすか。どこで一度止めるか。
これを全部言葉に変えようとすると説明は長くなり、読む側も途中で止まってしまいます。
紙の手順書が悪いのではありません。紙だけで伝えるには向いていない作業があるという話です。
動画に向いているのは「流れ」がある作業
動画に残すべきなのは、写真では伝わりにくいものです。
特に、動きの順番やスピード感など、流れの中で見て初めて分かる作業が向いています。
ある部品をどこに置くかは、写真で伝わります。
でも、その部品をどう動かすか。どの順番で確認するか。
ここまで入ると、写真とテキストだけでは急に分かりにくくなります。
動画なら、一連の動きとしてまとめて見せられます。
新人は作業の全体像をつかみやすくなり、教える側も毎回ゼロから説明しなくて済みます。
これはOJTを楽にするためだけではありません。教える内容のズレを減らすためにも役立ちます。
すべてを動画にする必要はない
動画が向いている作業は、すべて動画にすべきでしょうか。
答えは違います。
手段は、作業の内容に合わせて選ぶものです。
写真で伝わるものは写真でいい。テキストで残した方がいい注意点はテキストでいい。
| 伝えたいこと | 向いている手段 |
|---|---|
| 完成形、部品の向き | 写真 |
| 作業の順番 | テキスト + 写真 |
| 手の動き、スピード感 | 動画 |
| 注意点、禁止事項 | テキスト |
| 全体の関係 | 図解 |
「この向きで置く」は写真で十分です。
「この順番で進める」は写真と文章で伝わります。
一方で、「このくらいの速さで動かす」「ここで少し止める」「この流れで確認する」は、動画の方が伝わります。
何を使うかを最初から決め打ちしない。その作業を一番分かりやすく伝える方法を選ぶことが、現場で使える手順づくりです。
新人は、文字だけで意図まで読み取るのが難しい
若い人は、動画で情報を受け取ることに慣れています。
分からないことがあれば動画で調べ、まず全体のイメージをつかんでから細かいところを見る。
そういう学び方が普通になっています。
その相手に、テキストだけでこちらの意図まで読み取ってほしいと求めるのは無理があります。
これは若手が文章を読めないという話ではありません。作業の中には、文字より見た方が早いものがあるという話です。
動きの流れが見えると、新人は「何をするか」だけでなく、「どんな流れで進むか」「どこを見ればいいか」「どのくらいの速さか」を一度につかめます。
全体像を先につかんでから手順書を読むと、文章の意味も入りやすくなります。
動画は、テキストを読む前の準備としても機能します。
最初にやることは、動画を撮ることではない
OJTに動画を使おうと考えたとき、多くの人がまず「何を撮るか」を考えます。
でも、最初にやることは撮影ではありません。
いまある手順を見て、何で説明するのが一番伝わるかを分ける作業です。
動画にする作業は、最初から多くなくていいです。
まずは、いつも新人がつまずく作業を1つ選ぶ。写真と文章では説明しにくい動きを1つ選ぶ。
そこからで十分です。
目的は、立派な動画教材を作ることではありません。新人が作業を理解し、失敗や間違いを減らすことです。
OJT動画で大事なのは、動画を増やすことではありません。相手が理解できる形を選ぶことです。
教育設計チェックシート
若手が育たない原因は、教える人の努力不足だけではありません。
何を、どの順番で、どんな形で伝えるか。
その整理がないままOJTを始めると、教える側も教わる側も苦しくなります。
現場教育ラボでは、OJTや新人教育を見直すための 若手が育つ 教育設計チェックシート を用意しています。
作業手順書、写真、動画、チェックリストをどう使い分けるかを考える入口として使ってください。