能力の高い部下ほど、現場を疲弊させる!
きつい言い方ですが、これは本人の人格の問題ではなく、評価の当て方が起こしている連鎖です。
気合いや意識の問題でもなく、「能力さえあれば評価」という見方そのものが、班の調整コストをじわじわ上げています。
最高の部下というのは、能力が高い人のことではありません。相手や会社がいま何を求めているかを見て、そこに価値を返せる人です。
読み終わったら、まず明日、自分の班で「この人は何を起点に動いているか」だけ確認してみてください。
記事はそのための一つの物差しです。
仕事ができる部下と、現場で助かる部下は、起点が違う
評価のズレは、いつもこの違いを見落とすところから始まります。
仕事ができる部下というのは、プレイヤーとして優秀な人です。
こなせる量が多くて、判断も速い。後工程まで考えて動ける人もいます。これだけの力があれば、評価されないほうが不思議です。
ただ、仕事ができることと、現場で本当に助かることは別の話です。
助かる部下は、できるかできないかより先に、いま周りが何を求めているかを見ています。
言われたことをこなして終わりではなくて、チームや会社が必要としているものに気づいて動く。
差は技術力ではなくて、起点の違いです。
「自分が何を出せるか」から動くか、「相手が何を求めているか」から動くか。
ここから先の違いは、すべてこの一点から出てきます。
伸びる部下は、いつも相手のほうを見ている
「この人は伸びるな」と感じる瞬間があります。
- 指示を待つだけでなく、自分から状況を確認しようとする
- 手を動かす前に、何を求められているかを聞く
- 自分のやり方を押し通さず、相手に必要な形に合わせる
これが自然にできる部下は、信頼の積み上がり方が違います。
相手のほうを見ているから、必要なところを外しにくい。外さないから、任される仕事が少しずつ広がっていきます。
こういう動き方は、ひとことで言うとマーケットインに近い考え方です。
マーケットインというのは、もとは商品開発の言葉で、相手がほしいものから考えて作る、という意味です。
仕事に置き換えると、まず相手を見て、求められていることを起点にする。
この向きが体に入っている部下は、どこの職場に行っても頼られます。
技術の高さより先に、この向きが信頼を作っています。
能力があっても扱いにくいのは、起点がズレているから
能力はあるのに、なぜか現場で扱いにくくなっている部下もいます。
共通しているのは、「俺はこれだけできる」という見せ方が前に出てしまうことです。
スキルを示したい気持ちが強い分、周りの話が入ってきません。
指摘を受けても建設的な会話になりにくく、チームで決めたことより、自分のやり方が優先されていきます。
ここで気をつけたいのは、本人を「気合いが足りない」「意識が低い」と片付けないことです。
本人に悪意があるわけではなく、ただ仕事の出発点が「自分が何を出せるか」になっているだけだからです。
これがマーケットインの反対のプロダクトアウトです。
自分が作りたいもの、自分が見せたい力から考える、という発想です。
仕事に当てると、相手のニーズ、つまり相手が本当に必要としていることより、自分のスキルを示すことが先に来ている状態です。
これは精神論で直りません。
直すべきは、本人の意識ではなく、リーダーが「何を見て評価するか」という仕組みのほうです。
放っておくと、周りが少しずつ遠慮し始めて、職場の調整コストがじわじわ上がっていきます。
能力のある一人を抱えるために、周りが疲れていく…。
これが、評価で人を間違えたときに起きていることです。
製造業の現場では、前後の工程まで見える人が強い
ここまでの違いは、製造業の現場では特にはっきり出ます。
自分の工程をどれだけ完璧にやっても、後工程が困ることがあります。
- 渡し方が雑
- 必要な情報が抜けている
- タイミングがずれている
自分の持ち場だけ見れば合格なのに、流れ全体で見ると問題が出ます。
本当にありがたいのは、自分の前後にいる人まで見える部下です。
自分の班だけでなく、職場全体、もっと言えば会社がいまどこを向いているかまで意識する。その上で、自分が何をすべきかを選ぶ。
視野が一段広いというだけで、現場の調整コストは大きく下がります。
これは技術力とは別の話です。
技術が高くても、見ている範囲が狭ければ、周りを助ける仕事にはなりにくい。逆に、まだ経験は浅くても、前後の工程を意識して動ける部下は、チームとしてまわしたとき頼りになります。
製造業で本当に強いのは、前後を見る癖がある人です。
部下を見るときは、能力より先に「向いている先」を見る
能力だけを基準にしていると、評価を間違えます。
下の表は、「自分のために動いているか」「周りのために動いているか」で、仕事の出方がどう変わるかを並べたものです。
| 見るポイント | 自己満足の仕事 | 助かる仕事 |
|---|---|---|
| 見ている先 | 自分の力・自分の評価 | 相手・後工程・会社 |
| 聞く姿勢 | 自分の考えを通す | 何を求められているか確認する |
| 仕事の出し方 | できることを見せる | 必要な形で返す |
| 周囲への影響 | 周りが合わせにいく | 周りが楽になる |
| 伸び方 | 個人技に偏りやすい | 役割が広がりやすい |
技術や能力は、後からでも鍛えられます。
ただ、見ている先は意識しないと変わりません。
部下を見るときは、まず「この人は何を起点に動いているか」から確認したほうが、評価がズレにくくなります。
この問いを毎週1回、自分の班に当ててみるだけで、能力評価だけで人を見るクセが少しずつ抜けていきます。
評価の当て方が、現場の方向を決める
最高の部下は、個人の処理能力が高い人で終わりません。
相手が今何を求めているかを見て、期待されている以上の形で返せる人。これが、現場で本当にありがたい部下の姿です。
能力のある人を評価することは大事です。
ただ、見ている先まで評価できる現場と、できない現場では、長い目で見ると差が出ます。
個人技だけを褒め続けると、周りを助ける動きをしている部下の価値が、現場で見えにくくなる。その積み重ねで、能力はあるのに噛み合わない人だけが残っていきます。
逆に、相手のニーズを見て動こうとする部下を、ちゃんと評価できる現場は強い!
正直に言えば、ここを評価できない会社は、長くはもちません。
能力の高い個人だけが目立って、現場を支えている人が消耗していくからです。
どんな部下を育てるかだけでなく、どこを評価しているかが、現場の方向を決めます。
部下を評価するときに、「能力があるかどうか」だけでなく「どこを見て仕事をしているか」も確認できるようになると、育成の精度は一段上がります。
明日の朝礼や1on1で、部下の一人について「この人は何を起点に動いているか」だけを観察してみてください。
下のチェックシートは、その観察を整理に変えるための叩き台です。