「マインドセット」という言葉は聞いたことあるけど、なんだかよくわからないなぁ…という人は多いと思います。
人の上に立つ立場の人間なら、この「マインドセット」の本質を知っておいたほうがいいです。
なぜなら、相手の思考を支配しているマインドセットがわかれば、相手の行動をコントロールできるからです。
洗脳して操るって意味ではありません。
相手を理解することで、適切な対応ができるということです。
今回は、スタンフォード大学心理学の権威による世界的ベストセラー『マインドセット「やればできる!」の研究』(キャロル・S・ドゥエック著、今西康子訳、草思社刊)に書かれている内容を交えつつ、リーダーとして知っておくべきマインドセットの本質について書いていこうと思います。
マインドセットとは何か?
マインドセットとは、経験、教育、先入観などから形成される思考様式、心理状態。暗黙の了解事項、思い込み(パラダイム)、価値観、信念などがこれに含まれる。
マインドセットという言い方は、人の意識や心理状態は一面的なとらえ方はできず、多面的に見てセットしたものがマインドの全体像を表しているということから来ている。
この説明を見ると、なんだかむずかしそうだなぁ~と思うかもしれませんが、簡単にいうと「無意識の思考のクセ」です。
ほとんどの人はこの「マインドセット」に、「思考」や「行動」を支配されています。
たとえば「努力」について、「努力は欠陥人間がすることだ」という思い込みをもっている人は、努力しなくても自分は優秀なんだということをアピールするための行動をとります。具体的にいうと、自分より能力が劣る人をバカにして自分のほうが優秀だとアピールしたり、自分を大きく見せるために嘘をついたりします。
逆に、「能力や才能は努力しだいでいくらでも伸ばせる」という信念がある人は、今の自分が優秀かどうかよりも「成長すること」に重点を置いているので、努力し続けることができます。
なぜこのような違いが起こるのか?
それは、『マインドセット「やればできる!」の研究』の中で紹介している、2種類のマインドセットを理解することで解き明かすことができます。
「硬直マインドセット」と「しなやかマインドセット」の違い
先ほど2種類のマインドセットがあることを書きました。
具体的には、
- 「人間の能力は生まれつき固定されたものだ」と考える【硬直マインドセット】
- 「人間は成長しつづけられる」と考える【しなやかマインドセット】
この2種類です。
「硬直マインドセット」の人は、生まれもった才能や能力、つまり「変えることのできない与えられたもの」で勝負しようとします。対して「しなやかマインドセット」の人は、人間は成長し続けられると考え、「与えられたものを自分の力で変えよう」と努力し続けます。
この「与えられたものをどう使うか」というフレーズは著書『嫌われる勇気』の中でも出てきました。
われわれは「なにが与えられているか」について、変えることはできません。しかし、「与えられたものをどう使うか」については、自分の力によって変えていくことができます。だったら「変えられないもの」に注目するのではなく、「変えられるもの」に注目するしかないでしょう。わたしのいう「自己受容」とは、そういうことです。
『嫌われる勇気』第五夜 自己受容についてP228 より
※『嫌われる勇気』については以下の記事にも詳しく書いています。
簡単に言うと、
- 能力は「変えられない」と思っているか
- 「いくらでも変えられる」と思っているか
の違いです。
ただし、この思考の違いが及ぼす影響は自分ごとだけでは済みません。思考や言動を支配し、まわりの人にも大きな影響を与えることになるんです。
「成功」と「失敗」の定義の違いが「行動」の違いを生む
「硬直マインドセット」と「しなやかマインドセット」の違いについてはだいたい理解できたと思います。
ここからは、それぞれがもつ「成功」と「失敗」の定義について書いていきます。
硬直マインドセットの人がもつ「成功」と「失敗」の定義
硬直マインドセットの人は、自分は成長途上にある人間ではなく、すでに成長の止まった「完成品」だと思っています。
なので、完成された自分という作品をいかに美しく見せるかに重点が置かれています。
自分の賢さや才能を証明できれば成功
<成功例>
- 何かをすばやく完璧にこなしたとき
- 人にはできないことが自分には完璧にできるとき
<口ぐせ>
- 「俺って天才!」
- 「どうや? すごいやろ!」
- 「完璧!」
<理想のパートナー>
- 自分をあがめてくれる人
- 自分は完璧だと感じさせてくれる人
- 自分を尊敬してくれる人
つまずいたらそれでもう失敗
<失敗例>
- 人からダメ出しをされる
- プレゼンがうまくいかない
- 自分より成果を上げるやつがいる
努力するのは「頭が悪くて能力に欠ける証拠だ」と思っているので、他人が努力するのを見て「能力がないやつ」「才能がないやつ」とバカにします。
しなやかマインドセットの人がもつ「成功」と「失敗」の定義
しなやかマインドセットの人は「成長すること」がベースになっています。
結果だけを見てよろこんだり落ち込んだりすることはなく、常に「成長」につなげようと努力します。
自分は成長途上なので、磨けばいくらでも光ると信じています。
頑張って新しいことを習得できれば成功
自分を成長させることができれば成功
<成功例>
- 失敗から学んで次に挽回できたとき
- 犯した間違いから教訓を得て成長できたとき
<理想のパートナー>
- こちらの欠点をよくわかっていて、その克服に取り組む手助けをしてくれる人
- もっと優れた人間になろうとする意欲をかきたててくれる人
- 新しいことを学ぶように励ましてくれる人
しなやかマインドセットの人にとって失敗とは、
- 教訓を与えてくれるもの
- 目を覚ましてくれるモーニングコール
という前向きなもの。
「成長できなければ失敗」
<失敗例>
- 自分が大切だと思うものを追求しないこと
- 可能性を十分に発揮できないこと
ここまでがマインドセット毎の「成功」と「失敗」それぞれの定義です。
基本的に硬直マインドセットの人は、「自分の優秀さを証明すること」を中心に動いている、対するしなやかマインドセットに人は、「成長すること」を中心に動いています。
こうやってみると、ものすごくわかりやすいですね。
この特性を理解しておけば、部下の言動にいちいちイライラせずに済みます。
ここまで読んだあなたにはもう、部下を支配しているマインドセットが透けて見えているはずです。
「今、自分の優秀さを証明するためにこんなこと言ってるんだな!」
とか、
「たいして努力しないのは、失敗しても『本気を出してないから』という言い訳をするためなんだな!」
ということがわかるようになっているはずです。
さらに詳しくマインドセットのことを知りたい方は、『マインドセット「やればできる!」の研究』(キャロル・S・ドゥエック著、今西康子訳、草思社刊)を読んでみてください。
この本を何回か読めば、まわりにいる人がどのマインドセットなのか、どういう付き合いをすればいいのかなどが手に取るように分かるようになってるはずですよ。
まとめ
今回は、リーダーとして知っておくべき「マインドセット」の本質について書きました。
まとめると、
マインドセットには大きく分けて2種類ある。
- 硬直マインドセット
- しなやかマインドセット
前者は、「自分の優秀さを証明すること」が一番大事だと思っている。
後者は、「自分が成長すること」が一番大事だと思っている。
この2種類のマインドセットの特徴を把握することで、あなたの職場の人間関係を改善する手段が見えてきたはずです。
「仕事がバリバリできるんだけど、硬直マインドセットなんだよな~」
「どうにかして、しなやかマインドセットになってほしい!」
という場合は、部下にこの本をプレゼントしてあげてください(笑)。
きっと自分の力で気づいて、歪んだマインドをセットし直すきっかけになるはずですよ(*^^*)