製造業において作業手順書は、品質や安全性を保ち、効率的な生産を実現するために欠かせないツールです。
手順書が明確で分かりやすいと、作業者全員が一貫した手順で作業を進められ、ミスやトラブルを防ぐことができます。
この記事では、製造業で役立つ作業手順書のテンプレートと、作成時の重要なポイントについて解説します。
作業手順書の基本構成とテンプレート
作業手順書は、作業者が作業の流れや安全確認事項をスムーズに把握できるよう、一定の構成に従って作成することが重要です。以下は基本的な構成要素を含むテンプレートの例です。
基本構成
- タイトルと概要
- 手順書のタイトル、作業の目的や概要を簡潔に記載します。
- 適用範囲
- 手順書が適用される製品や工程、対象者を明記します。
- 準備物
- 作業に必要な工具、材料、備品などをリスト化します。
- 作業環境と安全確認事項
- 作業場所の安全確認事項(例:保護具着用、点検方法など)を記載します。
- 作業手順
- 作業の具体的な流れをステップごとに記載します。
- 注意点やポイント
- 作業中の注意点や、安全に関するポイントを示します。
- 確認・点検項目
- 作業後に必要な確認項目や品質チェックを記載します。
- 担当者と承認者のサイン欄
- 作業者および管理者の確認と承認を行う欄を用意します。
作業手順書テンプレート例
作業手順書
タイトル: 製品A 組み立て手順書
作成日: 2024年10月13日
適用範囲: 製品Aの組み立て作業
作成者: 〇〇部 〇〇
1. 準備物
- 工具: 電動ドライバー、トルクレンチ
- 材料: 部品A、部品B、ネジM4
2. 作業環境と安全確認事項
- 作業前に安全保護具(安全メガネ、手袋)を着用すること。
- 作業台の周囲を整理整頓し、転倒防止に努める。
3. 作業手順
- ステップ1: 部品Aを台に固定し、部品Bを上から重ねる。
- 注意: 部品Bの向きに注意して組み立てる。
- ステップ2: ネジM4で部品AとBを固定する。
- 使用工具: トルクレンチ
- 注意: 規定トルク値(15N·m)で締め付けを行う。
- ステップ3: 固定が完了したら、目視で位置ずれがないか確認する。
4. 確認・点検項目
- ネジの締め付けトルクが規定値であることを確認。
- 組み立て後の製品に傷や汚れがないかを確認。
5. 担当者と承認者のサイン欄
- 作業担当者: 〇〇〇〇(サイン)
- 承認者: 〇〇〇〇(サイン)
作業手順書作成のコツ
作業手順書は、作業者が理解しやすく実行しやすい内容であることが大切です。以下に、作成時のコツやポイントを挙げます。
1. 簡潔で明確な表現を使う
- 手順書は、短く簡潔な文章で作成するのが基本です。具体的な動作やポイントを含む分かりやすい表現で書き、無駄な情報は極力省きましょう。
- 例えば、「部品Aを部品Bに固定する」よりも、「部品Aをネジで部品Bに固定し、トルク15N·mで締め付ける」と具体的に記載します。
2. 図や写真を活用する
- 文章のみでは理解が難しい作業は、図や写真を使って視覚的に伝えましょう。各ステップに対応する画像を配置することで、作業者の理解が深まり、作業ミスが減少します。
- 特に部品の向きや配置が重要な工程では、矢印やラインを入れた図解を加えるとより分かりやすくなります。
3. 安全管理のポイントを強調する
- 作業時の安全管理は非常に重要です。危険箇所や注意事項は強調して表示し、視覚的に分かりやすくしましょう。
- 例えば、「ネジの締め付け時には手袋を必ず着用」といった注意点を、太字やアイコンを使って目立つように記載します。
4. 各作業手順をステップごとに分ける
- 手順書の手順は、1つの動作ごとにステップ分けし、それぞれに番号を付けて整理します。これにより、各作業を順を追って理解しやすくなり、混乱や手戻りを防ぎやすくなります。
- 1ステップには1つの動作に絞り、「固定」「締め付け」「確認」など、動作が明確に伝わるよう工夫します。
5. 点検項目と承認手続きの記載を忘れない
- 作業手順が完了した後の点検や承認手続きも、手順書に含めることが重要です。点検項目をリストにし、作業者がチェックできる形式にしておくと、ミスや漏れが防止できます。
- 最後に担当者と承認者が確認・サインをする欄を設け、責任の所在が明確になるようにしましょう。
作業手順書の改善のために
作業手順書は、一度作成して終わりではなく、現場での改善点を反映して定期的に見直すことが重要です。以下に改善のためのヒントを紹介します。
1. 作業者からのフィードバックを反映
実際に手順書を使用する作業者からの意見や改善点を反映させ、より実用的な手順書にアップデートしましょう。現場の意見を反映させることで、使いやすい手順書に改善することができます。
2. 定期的に手順の精査と更新を行う
製造工程や使用する部品が変わると手順も変化します。作業手順書が古くならないよう、定期的に内容を精査・更新して、現場での実際の作業内容と一致させるようにしましょう。
3. チェックリストや電子化も検討する
特に大量の作業工程がある場合、チェックリストとしての機能を付け加えたり、スマホやタブレットでデジタル化することで、手順の確認や管理がさらにスムーズになります。
まとめ
製造業での作業手順書は、作業の品質と安全性を維持するために重要な役割を果たします。テンプレートを活用し、具体的かつ簡潔な表現、図や写真の活用、安全管理の強調などを意識して作成することで、分かりやすく効果的な手順書に仕上げられます。また、定期的な更新や改善も欠かさず行い、現場で活用される実用的な手順書を目指しましょう。