今回は、「製造現場のリーダーに求められる基本的な役割」について書きたいと思います。
「同じ会社の上司や先輩リーダーを参考にするのは危険!」
いきなりこんなことを言われて戸惑うかもしれませんが、本当に危険だと思っているので書きました。
なぜなら、会社の上司や先輩リーダーがもっているリーダー論は、古い可能性があるからです。
過去に通用していたことが今は通用しない・・・そんな情報はたくさんあります。
そういう情報は、迷いを生むノイズにしかなりません。
なので、聞かないほうがマシです。
じゃあどうすればいいのか?
まずは、リーダーに求められる基本的な役割をしっかりと理解しておく必要があります。
そこで今回は、ビジネス心理学の領域で研究されてきたリーダーシップ論を参考にしつつ、製造現場のリーダーにはどのような役割が求められるのかを見ていきましょう。
リーダーとして求められる2つの大きな役割
製造現場のリーダーに求められる役割は大きく分けて2つあります。
- 目標達成や課題解決を促す「目標達成機能」
→Performance function(パフォーマンス機能) - 集団の維持やまとまりを促す「集団維持機能」
→Maintenance function(メンテナンス機能)
これを、「Performance function」と、「Maintenance function」の頭文字を取って、「PM理論」といいます。
「PM理論」とは、三隅二不二によって提唱された理論であり、組織においてのリーダーのリーダーシップの構成についてである。PM理論のPというのは「Performance function」の略であり、Mというのは「Maintenance function」の略である。リーダーにPが備わっていれば組織は成果を上げられるようになり、Mが備わっていれば組織はチームワークを強化できるようになる。このPとMがリーダーにどれだけ備わっているかということがリーダーシップをどれだけ発揮しているかを示す基準となるということである。
「PM理論」は、リーダーとしての役割を確認できる指針のようなもの。
今の自分と照らし合わせることで、どのように改善していけばいいのかを見定めることができます。
リーダーに必要な役割を具体的に自覚することで、どのような行動をとればいいのかがハッキリとわかるので、ムダな迷いがなくなるはずです。
まるで「家訓」のような感じですね。
参考家訓(上杉家)
- 心に物なき時は心広く体泰なり
- 心に我儘なき時は愛敬失わず
- 心に欲なき時は義理を行う
- 心に私なき時は疑うことなし
- 心に驕りなき時は人を教う
- 心に誤りなき時は人を畏れず
- 心に邪見なき時は人を育つる
- 心に貪りなき時は人に諂うことなし
- 心に怒りなき時は言葉和らかなり
- 心に堪忍ある時は事を調う
- 心に曇りなき時は心静かなり
- 心に勇みある時は悔やむことなし
- 心賤しからざる時は願い好まず
- 心に孝行ある時は忠節厚し
- 心に自慢なき時は人の善を知り
- 心に迷いなき時は人を咎めず
これがあるのとないのとでは、筋の通り方がぜんぜん違います。
どれくらい違うかというと、「ミスタービーン」と「カルロス・ゴーン」のキャラぐらい違います(笑)。
PM理論を判断基準にすれば、ビシッと筋の通った行動がとれるようになります。
筋の通った行動ができれば、製造現場にいる気の荒い部下からも信頼される存在になれますよ。
自分にふさわしいリーダーシップのスタイルは?
「目標達成機能(P)」と「集団維持機能(M)」、この2つの強弱により、4つのタイプに分類されます。
- PM型:「P」も「M」も強く発揮できるタイプ
- Pm型:「P」のみ強く発揮するタイプ
- pM型:「M」のみ強く発揮するタイプ
- pm型:どちらの機能も弱いタイプ
図で表すと以下のようになります。
みんなをグイグイ引っ張っていくのは得意だけど、人の気持ちを汲み取るのは苦手な人もいるでしょうし、その逆もいるでしょう。
それぞれ個性があるので、それはそれでしかたないです。
そこで、自分の性格や能力面の強み・弱みを踏まえ、自分はどの項目にいるのかを確認してみてください。
- 今できているものはなんなのか?
- これから意識すればできるようになるものはなんなのか?
- どうしても苦手でできないものは?
これらを自覚するだけでも、何をどうすればいいのかが見えてくるはずです。
さらに、「目標達成機能(P機能)を担う行動」と「集団維持機能(M機能)を担う行動」の詳細を以下にまとめましたので、確認してみてください。
「目標達成機能」(P機能)を担う行動
- 目標を明確化し、部下に目標をたえず意識させる
- 目標達成のための計画を立てる
- 部署としての方針を決め、それを徹底させる
- 目標達成のための方法を具体化し、それを部下にしっかり理解させる
- 部下に役割を割り振り、それぞれの役割分担を明確にする
- 部下に行動の開始や役割の遂行を促す
- それぞれの部下の仕事の進歩状況を把握している
- 目標達成の過程で生じた問題点を明確化し、その対処法についてアドバイスを与える
- 情報源・アドバイザーとしての役割を果たすべく、専門的知識や技能の習得に励む
- それぞれの部下の成果を正確に把握し、正当に評価する
「目標達成機能」を簡単にまとめると、
目標の設定や計画の立案、指示などにより、成績や生産性を高める能力のことを指します。
「集団維持機能」(M機能)を担う行動
- 快適かつ友好的な雰囲気の醸成・維持に配慮する
- 部下相互の交流を促進する
- 部下相互の情報交換を促進する
- 少数派にも発言の機会を与えるよう配慮する
- 内部でいざこざが生じたときは仲裁する
- 集団の和を乱す部下に対しては適切な対処をする
- 部下一人ひとりの意見を尊重し、自主性・当事者意識をもたせる
- 部下一人ひとりの気持ちに配慮し、不平・不満に耳を傾ける
- 悩みや迷いを抱える部下の相談に乗る
- 部署の代表として、必要なときは他の部署の人たちと交渉を行う
「集団維持機能」を簡単にまとめると、
集団の人間関係を良好に保ち、チームワークを強化、維持する能力のことを指します。
リーダーとして苦手な分野はどうすればいい?
リーダーとして、どうしても苦手な分野があるのは仕方がないことです。
でもそこを「苦手やからムリ!」と開き直るのではなく、得意な人に任せることが大事です。
一番ダメなのは、
すべてを自分ひとりで完璧にこなそうとすること。
そりゃあリーダーとして完璧を目指したい気持ちもわかるんですが、「こうなるべき」みたいな感じで自分を追い込むのだけは避けてください。
自己理解がない人が相手のことを理解するのは難しいです。
なのでまず行うことは、自分ができることはなんなのか、できないことはなんなのかを、PM理論と照らし合わせながら掘り下げていくことです。
そうすることで、自分ができることとできないことをハッキリと区別し、苦手な機能をサブリーダーに補ってもらうなどの工夫ができるようになるはずですよ。
まとめ
今回は、「製造現場のリーダーに求められる基本的な役割」というテーマで書きました。
「PM理論」は製造現場に限らず、どの業界でも通用する理論です。
分類された4つのタイプのうち、自分がどこにいるのかを把握し、リーダーとして適切な行動を取れるように頑張ってください。