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OJT担当者に任せる前に会社が渡す5つのもの

OJT担当者に任せる前に会社が渡すもの

新人が入ってくるタイミングで、現場ではよくこういう会話が起きます。

「新人入るから、また見ておいて」

「お前ならできるだろうから、教えといて」

任せる側としては、自然な判断です。

経験があり、仕事も安定していて、若手から見ても頼れる人にお願いした方が安心だからです。

ただ、ここで一つ抜けやすいものがあります。

それは、OJT担当者も、最初から「教える人」として育っているわけではない、ということです。

仕事ができる人でも、教え方を学んでいなければ、自分が受けてきた教え方や、自分が苦労して身につけたやり方で教えます。

本人に悪気がなくても、会社が残したい標準ではなく、その人の自己流が次の世代へ渡っていくことがあります。

OJT担当者を決めること自体は、スタートです。

そこで終わらせず、「何を教えるのか」「どの順番で教えるのか」「どこを見て判断するのか」まで渡せるかどうかで、OJTの質は大きく変わります。

この記事で確認すること

  • OJT担当者へ任せる前に渡すもの
  • 新人教育を丸投げにしないためのチェック項目
  • 新人が迷わない声かけの変え方

OJTを人任せにしないためには、新人だけでなく、教える側にも準備が必要です。

「新人を見ておいて」という丸投げでは、OJTは設計にならない

OJT担当者を決めるとき、会社や管理職はよく「この人なら大丈夫だろう」と考えます。

  • 経験が長い
  • 作業が早い
  • 品質も安定している
  • トラブル時の判断もできる

たしかに、そういう人はOJT担当者の候補になります。でも、仕事ができることと、人に教えられることは同じではありません。

たとえば、作業がうまい人ほど、自分の中では当たり前になっている判断があります。

  • 最初にどこを見るか
  • どの状態を危ないと見るか
  • どの順番で覚えればつまずきにくいか
  • どこまでできたら一人で任せてよいか
  • 失敗したとき、何を直せば次に進めるか

本人にとっては自然にできていることでも、新人には見えていません。

そこを分解しないまま「見て覚えて」「何回かやれば分かる」と渡してしまうと、新人は何を学べばいいのか分からなくなります。

これは、OJT担当者だけの問題ではありません。

任せる側が、教えるための材料を渡していないことも多いです。

「この新人を見ておいて」と言うだけでは、教育設計にはなりません。

任せるなら、到達点、順番、見本、観察項目、振り返り方まで渡す必要があります。

その準備がないまま現場へ渡すと、任命したつもりでも、受け取る側から見れば丸投げになります。

教える側を教育しないOJTは、自己流を再生産する

教え方を学んでいない人は、悪気がなくても、自分が受けた教育を使います。

自分が見て覚えたなら、新人にも見て覚えさせる。

自分が強い言い方をされながら覚えたなら、それを「厳しさ」や「現場らしさ」だと受け取りやすい。

自分が苦労して乗り越えたなら、「それくらい自分で考えてほしい」と感じることもあります。

こういう流れは、現場では珍しくありません。

本人は新人を困らせたいわけではなく、ちゃんと育ってほしいと思っている。それでも、自分が知っている教え方がそれしかなければ、その方法を使うしかありません。

ここで起きているのは、技術の継承というより、過去の教育方法のコピーです。

会社としては標準を残したい。

新人には基本から覚えてほしい。

けれど、教える側が自分の経験だけで教えると、会社の標準ではなく、その人の成功体験が渡されます。

苦労して覚えた人ほど、その苦労を正当化しやすい。

自己流でうまくなった人ほど、自己流を疑いにくい。

だからこそ、OJT担当者を任命する前に、会社側が一度立ち止まる必要があります。

  • 会社として残したい基準は何か
  • 担当者のやり方と標準はどこが違うか
  • 新人に最初から渡してはいけない応用は何か
  • 担当者本人が、何を教え方として学んでいないか

ここを見ないままOJTを始めると、現場の古いやり方は静かに再生産されます。

OJT担当者に渡すべき5つのもの

OJT担当者を任せる前に、会社や管理職が渡すべきものは大きく5つあります。

1. 何をできる状態にするのか

最初に必要なのは、到達点です。

「一人でできるようにしておいて」では、粒度が粗すぎます。

  • 一人でできるとは、どこまでを指すのか
  • 手順を覚えることなのか
  • 判断基準まで持つことなのか
  • 異常が出たときに止められることなのか

ここが曖昧なまま任せると、OJT担当者も自分の感覚でゴールを決めます。

任命する側は、まず「この作業は、ここまでできたら一人で任せる」と言葉にする必要があります。

2. どの順番で教えるのか

新人にいきなり完成形を見せても、どこから覚えればいいか分かりません。

  • 安全確認を先にするのか
  • 標準手順を先に固定するのか
  • 良い例と悪い例をどのタイミングで見せるのか
  • 例外や応用は、どこまで基本が入ってから渡すのか

この順番を決めずに任せると、OJT担当者は自分が話しやすい順番で説明します。

でも、話しやすい順番と、新人が覚えやすい順番は違います。

3. 良い例・悪い例・NG例

新人は、良い状態だけを見ても判断できません。

  • 何が良いのか
  • どこからが悪いのか
  • どこまで行くとやり直しなのか

この幅が見えないと、現場で迷います。

「きれいにしておいて」

「ちゃんと確認して」

「危なかったら止めて」

こういう言葉だけでは、人によって受け取り方が変わります。

教える側には、言葉だけでなく、見本・NG例・判断の境目を渡す必要があります。

たとえば製造現場なら、良品サンプルだけでなく、次のようなものも並べて見せます。

  • 寸法は入っているが、見た目に違和感があるもの
  • 仮止めの位置がわずかにずれて、後工程で困るもの
  • 確認を飛ばすと手戻りになるもの

「合格ラインはここ」

「この状態ならやり直し」

「ここを見落とすと後工程で困る」

この材料があるだけで、OJT担当者はかなり教えやすくなります。

4. 新人の現在地を見る観察項目

OJT担当者は、新人がどこで止まっているかを見なければいけません。

  • 手順を知らないのか
  • 理由が分かっていないのか
  • 怖くて聞けないのか
  • 分かったふりをしているのか
  • 確認するポイントがずれているのか

ここを見ずに「できていない」で終わると、教育は進みません。

たとえば、次のような止まり方があります。

  • 手順は言えるが、なぜその順番なのか説明できない
  • 毎回同じ確認を飛ばす
  • 良品とNG品を見せたとき、違いを言葉にできない
  • 分かったと言うが、作業前に見本を見直さない
  • 失敗後に、どこで判断を間違えたか言えない

これらは、本人のやる気だけで片づける話ではありません。

  • 標準の意味が入っていないのか
  • 見る場所が分かっていないのか
  • 確認するタイミングが身についていないのか

止まっている場所によって、次に教えることは変わります。

新人の問題に見えているものが、実は教える順番や説明の粒度の問題だった、ということはよくあります。

だから、教える側には「できたかどうか」だけでなく、「どこで止まっているか」を見る項目が必要です。

5. 失敗したときに設計へ戻るフィードバック方法

新人が失敗したとき、すぐ本人の性格や姿勢に戻すと、教育は止まります。

もちろん、本人の態度を見る場面はあります。

ただ、最初に見るべきは設計です。

  • どこまで教えていたか
  • 見本はあったか
  • NG例は見せたか
  • 確認するタイミングは決めていたか
  • 質問しやすい状態を作っていたか

この確認をせずに注意だけ増やしても、次の失敗は減りにくいです。

フィードバックは、相手を責めるためではなく、次に何を変えるかを決めるためにあります。

OJT担当者がこの見方を持てると、新人の失敗を「本人の問題」だけで片づけにくくなります。

任命前に確認したいチェックリスト

OJT担当者を決める前に、次の項目を確認しておくと、任せっぱなしになりにくくなります。

任命前に渡すものまだ曖昧なら確認する質問
到達点どこまでできたら一人で任せるのか
教える順番安全、標準、NG例、応用の順番は決まっているか
良い例・悪い例合格ラインとやり直しラインを見せられるか
観察項目新人がどこで止まっているか見る項目はあるか
フィードバック失敗時に何を設計へ戻して見るか

この表は、きれいに埋めるためのものではありません。埋まらないところを見つけるためのものです。

たとえば「合格ラインとやり直しラインを見せられるか」で止まるなら、OJT担当者に任せる前に、見本やNG例を準備した方がいい。

「失敗時に何を設計へ戻して見るか」が曖昧なら、失敗が起きたときに担当者一人の判断へ寄りやすくなります。

この確認がないまま任せると、会社は任命したつもりでも、現場では新人教育の丸投げになります。

OJT担当者の力量に頼る前に、会社側が渡すものをそろえる。この順番を外さないことです。

OJTで使いやすいNG/OK声かけ例

教え方は、声のかけ方にも出ます。

同じことを伝える場合でも、言い方を少し変えるだけで、新人が見る場所は変わります。

避けたい声かけ置き換えたい声かけ
見て覚えて最初はここだけ見て。次にここを確認して
何回かやれば分かるまず3回はここで止めて、一緒に確認しよう
ちゃんとやって合格ラインはここ。ここを超えたらやり直し
なんでできないんだどこまで分かっていて、どこから迷った?
前にも言ったよね前回と同じところで止まっているから、教える順番を変えよう

大事なのは、やさしい言葉に変えることだけではありません。新人が次に何を見ればいいか分かる言葉に変えることです。

「見て覚えて」では、見る場所が分かりません。

「最初はここだけ見て。次にここを確認して」なら、視線と順番が決まります。

「ちゃんとやって」では、何がちゃんとなのかが人によって変わります。

「合格ラインはここ。ここを超えたらやり直し」なら、判断基準が残ります。

OJT担当者にこうした言い換えを求めるなら、担当者本人にも材料が必要です。見本も基準も渡していないのに、良い声かけだけを求めるのは無理があります。

任命時にOJT担当者へ伝える3つのこと

ここまで、任命する側の準備を中心に見てきました。ただ、実際にはOJT担当者本人も不安を抱えています。

「自分の教え方でいいのか」

「どこまで面倒を見るべきなのか」

「自分の仕事もあるのに、どう進めればいいのか」

そう感じている担当者に、任命時に伝えておきたいことがあります。

  • 一人で抱え込まなくてよい
  • 教え方に迷ったら、標準と到達点に戻ってよい
  • 新人が止まったら、本人の問題だけでなく教え方も見直してよい

OJT担当者に必要なのは、完璧な教育者になることではありません。

会社が残したい基準を、新人が再現できる形に分解することです。

そのためには、担当者だけに任せず、上司や会社が確認に入る場面を作る必要があります。

任命する側がここを伝えておくだけで、OJT担当者は「全部自分で何とかしなければいけない」という受け取り方をしにくくなります。

OJT担当者を支えることは、新人を支えることと同じです。

教える人を決めたら、教える材料もセットで渡す

OJTは、新人と担当者だけの関係に見えますが、本当は会社の設計が出ます。

  • 誰に任せるか
  • 何を任せるか
  • 任せる人に何を渡すか
  • どこで確認するか
  • 教えた人をどう評価するか

ここまで決めて初めて、OJTは人任せではなくなります。

反対に、ここを決めないまま現場へ投げると、OJT担当者は自分の経験だけで何とかするしかありません。

その結果、自己流が再生産されます。

  • 新人が育たない
  • 教える人が疲れる
  • 教え方が人によって変わる
  • 基本が残らない

そういう問題は、新人の前に、教える側の準備から見直した方がいい場合があります。

OJT担当者を決めることは、スタートです。

そこで終わりではありません。

任せる人を決めたら、その人にも「教えるための材料」を渡す。

その一手がないまま若手育成を進めても、現場に残るのは会社の標準ではなく、個人の自己流になってしまいます。

教える側を育てることは、若手を甘やかすことではありません。

現場に残したい基準を、次の世代へ正しく渡すための準備です。

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