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動画マニュアルは撮る前に決まる|作業の流れを分ける手順

動画マニュアルは事前に作業の流れを作ることを示すアイキャッチ

「また同じところで間違えているな……」

現場で若手や応援の作業者を見て、そう言いたくなる場面があります。

紙の手順書を何度読ませても、作業の順番が頭に入らない。せっかくスマホで動画を撮って見せても、「動画が長すぎてどこを見ればいいか分からない」と言われてしまう。

結局、自分が毎回横について説明することになり、自分の時間がどんどん削られていく。こうした悩みを抱える現場のリーダーは少なくありません。

動画マニュアルを「使う側」の新人が迷わず動けるようにするには、撮る前にやることがあります。まず新人が追うべき「作業の流れ」を切り分けることです。

撮るだけではなぜ伝わらないのか。どう分ければ新人が一人で動きやすくなるのか。この記事では、その手順を整理します。

動画マニュアルは、撮る前の分け方で決まる

若手に作業を覚えてもらうために「とりあえずスマホで撮影しよう」と、ベテランの作業を最初から最後まで丸ごと撮影してはいませんか。

一生懸命に撮影した30分の動画は、新人に渡してもほとんど見られません。どこに必要な情報があるか探すだけで一苦労ですし、情報が多すぎて頭に残らないからです。

動画マニュアルが使われるかどうかは、撮影前の「分け方」で決まります。

どれだけきれいに撮影して編集しても、撮影前の分け方がズレていれば、初心者にとっては使いものになりません。まずはベテランの動きをそのまま記録するのをやめて、初心者が必要な「流れ」に切り分ける準備から始めましょう。

最初の手順動画は、作業の流れを覚えさせる

紙の手順書を見せても若手が覚えないのは、実際の動きをイメージしにくいからです。

新人に最初に渡す動画の目的はシンプルです。

「作業の流れを頭に入れて、一人で体を動かせるようになること」に絞ってください。

ベテランの素早い手の動きや、細かな調整テクニックを最初から見せる必要はありません。まずは「ステップAの次にステップBをやり、その後にステップCに移る」という全体の順番を、頭の中で追えるようにすることが先です。

全体の流れが頭に入っていると、新人は次に何をすればいいか予測がつくため、作業の手が止まらなくなります。

1作業を5から8個の流れに分ける

作業を切り分けるときは、1つの作業を「5個から8個の流れ」に収めるのが目安です。

4個以下だと1ステップあたりの作業範囲が広すぎて、新人が途中で迷ってしまいます。逆に9個以上になると、今度は一度に覚えきれなくなります。

具体的な例として、製缶フレームの「ジグ段取りから仮止め前チェックまで」の作業を切り分けてみましょう。

連続して流れるように見える作業も、新人が追うべきステップごとに分けると、次のようになります。

ステップ新人が最初に追う作業の流れ
ステップ1図面と作業範囲を見る
ステップ2ジグと作業台を段取りする
ステップ3部材の向き、表裏、左右をそろえる
ステップ4基準部材をジグに当てる
ステップ5けがき線、穴位置、端面を見る
ステップ6クランプで仮押さえする
ステップ7寸法、直角、対角を見る
ステップ8仮止め前に責任者確認へ戻す

※社内の正式な安全手順や品質基準については、それぞれの会社の社内ルールや基準に必ず従い、確認してください。

まずは「新人が最初にこの順番通りにやれば、形になる」という流れを作ります。

この表のステップごとに短い動画(10秒〜20秒程度)を撮影することで、見やすく、探しやすい動画マニュアルの土台ができあがります。

注意点は、流れの中へ差し込む

作業の流れを分けたら、次は「外すと手戻り(やり直し)になってしまう注意点」をそれぞれのステップに差し込みます。

たとえば、先ほどのステップ3「部材の向き、表裏、左右をそろえる」という流れ。ここで向きを間違えたまま進むと、後からすべて分解して溶接し直すような大きな手戻りが発生します。

だからこそ、ステップ3の動画には「図面の基準マークと、部材の刻印が同じ向きにあるか確認する」といった、具体的なチェック項目を差し込んでおくのです。

流れの途中で「ここを間違うと、後で大変なことになる」というポイントをセットで教えていきます。

厚生労働省の安全衛生教育情報でも、教育内容には作業手順だけでなく「作業開始前の点検」などが含まれています。

安全や品質に関わる点検ポイントは、動画の流れの中に埋め込み、最終的には必ず「会社の責任者への確認に戻す」という形を崩さないようにしましょう。

ベテランの動きは、初心者の基本と分けて見せる

現場の指導でよくある失敗が、ベテランならではの「ちょっとした裏ワザ」や「力加減のコツ」を、最初の動画に一緒に詰め込んでしまうことです。

「ジグに当てるとき、少し手前に引きながらクランプを締めるとズレにくい」といったベテランのコツは、初心者にとっては混乱の元になります。基本の流れも身についていない段階でコツを真似しようとすると、かえって時間がかかったり、品質が不安定になったりするからです。

ベテランの動きは、新人の基本の流れとは完全に分けて考えましょう。

まずは基本の8ステップを確実にできるようになるのが先決です。それができて初めて、「慣れてきたら、この動画を見て」と、ベテランのコツをまとめた10秒ほどの短い補足動画を見せるようにします。

ここで、撮影前に押さえておきたい考え方の「良い例」と「悪い例」を整理しておきます。

  • 【悪い例(NG)】ベテランの作業を最初から最後まで撮る(動画が長くなり、新人がどこを見ていいか分からなくなる)
  • 【良い例(OK)】新人が最初に追う流れだけを先に分け、注意点とベテラン補足を後から足す(やることが整理され、新人が一人で迷わず動けるようになる)

基本の流れ、注意点、ベテランの補足。この3つを混ぜずに切り分けることが、手順動画を現場で使える形にします。

撮る前に10分だけ確認する

動画の撮影を始める前に、机の上で10分だけ、切り分けた手順を確認します。

OSHA(米国労働安全衛生局)のトレーニングガイドラインでも、労働者が理解できる言葉で教育することが重視されています。

動画も同じです。撮影する側が満足する動画ではなく、見る側の新人が理解できる流れになっているか。撮影前にそこを見ます。

紙に書き出した5〜8個のステップを眺めながら、
「この言葉は、工業高校を出たばかりの若手でも迷わず理解できるだろうか」「この順番でやれば、途中で手が止まらずに最後まで進めるだろうか」と、一呼吸置いて問いかけてみてください。

この10分で、あとからの撮り直しや編集の手間を減らせます。

まとめ:まず1作業だけ、流れに分ける

工場の中にあるすべての作業を、一気に動画にする必要はありません。まずは、現場で「いつも自分が横について、何回も繰り返し説明しているな」と思う作業を1つだけ選んでみてください。

そして、カメラを向ける前に、裏紙に「新人が最初に追うべき流れ」を5個から8個書き出してみましょう。

そこからが、本当に現場で使われ、あなたの教える時間を減らしてくれる手順動画のスタートです。


参考記事:

-OJT設計
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