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高学歴なのに「仕事ができない」本当の理由。気が利かない自分を変える「センスの3段階理論」

言われた作業は完璧にこなしている。

ミスもなく、頼まれた資料も期日通りに提出している。

学生時代から努力を積み重ね、難関資格だって持っている。

それなのに、なぜか上司や先輩からはこう評価されてしまうことはないでしょうか?

「君は、気が利かないね」

「言われたことしかできない、マニュアル人間だね」

「仕事のセンスがないなぁ」

どれだけ真面目にやっても、この「センス」という正体不明の壁にぶつかり、「これ以上どう努力すればいいのか分からない」と絶望感を感じているかもしれません。

特に、これまで明確な「正解」があるテストで結果を出してきたあなたにとって、評価基準が曖昧な「仕事のセンス」で否定されることは、アイデンティティを揺るがすほどの苦痛でしょう。

多くの人は「センス=生まれつきの才能・ひらめき」だと思い込んでいます。だからこそ、「自分には才能がないから仕方がない」と諦めてしまいがちです。

しかし、その認識は間違いです。

くまモンのデザインなどで知られるクリエイティブディレクターの水野学氏は、著書の中でセンスをこう定義しています。

「センスとは、数値化できない事象のよし悪しを判断し、最適化する能力であり、それは**『知識の集積』**である」

つまり、あなたに足りないのは「生まれ持った才能」ではありません。単に、その職場における「普通」を知るためのインプット(知識量)が不足しているだけなのです。

本記事では、抽象的な精神論ではなく、認知科学的なアプローチで「仕事のセンス」を因数分解し、誰でも習得可能な「技術」として解説します。

なぜ高学歴ほど「仕事のセンス」で躓くのか

結論

学校の勉強(正解処理能力)と仕事のセンス(最適解の創造)は、求められる脳の使い方が根本的に異なるからです。高学歴な人ほど「他人が用意した正解」を探そうとするため、正解のない状況で判断停止に陥ります。

「学校の勉強」と「仕事のセンス」の決定的な違い

あなたがこれまで勝ち抜いてきた「学校の勉強」と、今求められている「仕事のセンス」には、決定的な違いがあります。

  • 学校の勉強:誰かが用意した「唯一の正解」を、いかに早く正確に導き出すか(高い情報処理能力)。
  • 仕事(センス):正解のない状況下で、その場における「最適解(良し悪し)」を自分で作り出す力。

高スペックなあなたが職場で苦戦するのは、能力が低いからではありません。

「ゲームのルールが変わったこと」に気づかず、旧来の攻略法(正解探し)を続けているからです。

「定規」を持っていない悲劇

センスが良いと言われる人は、自分の中に明確な「普通(基準点)」という定規を持っています。

「このメールの文面は、普通より丁寧すぎる(慇懃無礼になるかもしれない)」「この資料の配色は、普通より見づらい」といった判断が瞬時にできるのは、彼らの中に膨大な「普通のデータベース」があるからです。

一方で、勉強が得意なあなたは、自分の外側に「教科書(他人の定規)」を探そうとします。「マニュアルをください」「指示をください」と言ってしまうのはそのためです。

しかし、職場の人間関係やその場の空気感に教科書はありません。

その結果、判断基準がないまま行動してしまい、周囲から「ズレている」「気が利かない」と評価されてしまうのです。

「空気を読む」を技術化する3つのステップ

結論

センスは天性の才能ではなく、適切なプロセスを経れば後天的にインストール可能な「技能」です。「情報の収集(入力)」から「ルールの身体化(出力)」までの3ステップを回すことで、誰でもセンスを磨くことができます。

精神論で「もっと気を配れ」と言われても無理な話です。

ここでは、情報処理タスクとしてセンスを獲得する具体的な手順を紹介します。

Step 1:「普通(定規)」のデータベースを作る

センスを磨くための最初のアクションは、「王道」を知ることです。

クリエイティブな発想や、あっと驚くような気配りをする必要はありません。まずは、その職場における「一番ありふれたパターン(普通)」を徹底的にリサーチし、脳内にデータベースを構築します。

具体的なアクション

  • 過去の議事録を読み漁る。
  • 「仕事ができる」と言われている先輩のメール(CCに入っているもの)を分析する。
  • 成功したプロジェクトの企画書や報告資料を100個集める。

ここで重要なのは、「自分なりの工夫」を入れないことです。

まずは「型」を知らなければ、型を破る(センスを発揮する)ことは不可能です。泥臭く「データ収集」に徹してください。

Step 2:共通項のルール化(言語化)

データを集めたら、次はそこから「法則」を見つけ出します。

これを認知科学的なアプローチで言えば、パターンの抽出と構造化にあたります。

「なんとなく先輩はこうしている」で終わらせず、「なぜ?」を因数分解して言語化してください。

視点の例

  • 「なぜ先輩Aは、このタイミングでCCに部長を入れたのか?(→トラブルの予兆がある時は、早期に共有するのがこの課のルール?)」
  • 「なぜこの会議資料は、結論からではなく経緯から書かれているのか?(→この決裁者はプロセスを重視するタイプ?)」

これらを分析し、「トラブル報告は、解決策が未定でも第一報を入れるのが、この課の『普通』である」といった具体的なルールを抽出します。

これが、あなた独自の「判断の定規」になります。

Step 3:身体化(センサーモーターカップリング)

知識は頭に入れただけでは使えません。認知科学には「センサーモーターカップリング(感覚運動結合)」という概念があります。

これは、環境からの入力(知覚)と、それに対する身体の出力(運動)が密接に結びつくことで、環境に適応していくプロセスを指します。

つまり、集めた知識やルールを、実際に試してみる(出力する)必要があります。

具体的なアクション

  • 抽出したルールに基づいて、実際にメールを送ってみる。
  • 会議で発言してみる。
  • 資料を作成してみる。

最初は間違っていても構いません。

「仮説(ルール)→実行→フィードバック(上司の反応)」のサイクルを回すことで初めて、頭の中の知識は、無意識に使える「技能知(身体化されたセンス)」へと変わります。

自転車の乗り方を覚えるように、身体で覚えていくのです。

「気配り」とは「未来予測」である

結論

ベテラン社員が行っている「気配り」の正体は、超能力や優しさではなく、蓄積されたデータベースに基づく「確率論的推論(未来予測)」です。

「気が利く」と言われる人は、相手の微細な言動や状況から、未来をシミュレーションしています。

  • 「部長がこの資料のこの数字をじっと見ている(入力)」
  • 「過去のデータでは、ここを突っ込まれる確率が高い(データベース参照)」
  • 「補足資料を今のうちに手元に用意しておこう(予測と行動)」

これが「気配り」のメカニズムです。

あなたが「気が利かない」と言われるのは、性格が冷たいからでも、能力が低いからでもありません。未来を予測するための材料(データベース)が足りていないため、推論の精度が低いだけなのです。

Step 1~3を通じてデータベースが充実してくれば、「このパターンだと、次はこうなるはずだ」という予測精度が自然と上がり、周囲からは「気が利くようになった」と評価されるようになります。

【まとめ】今日から「センスがない」と言うのをやめよう

あなたが高い基礎能力(スペック)を持っていることは間違いありません。

これまでは、そのハイスペックな脳を使うための「OS(センス)」のインストール方法を知らなかっただけです。

「自分にはセンスがない」と嘆くのは、今日で終わりにしましょう。

今日から職場を、ただ漫然と作業をする場所ではなく、「『普通』というデータを収集すべきフィールド」と捉え直してみてください。

「センスは知識からはじまる」

この言葉を胸に、まずは泥臭く、職場の「普通」を1つずつ集めることから始めてみればいいのです。

その知識の集積が、やがてあなただけの武器となり、仕事の楽しさを教えてくれるはずです。

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